《舞台》「オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン」
「オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン」をDVDで鑑賞しました。
【製作】キャメロン・マッキントッシュ
【作曲】アンドリュー・ロイド=ウェバー
【出演】
ファントム・・・ラミン・カリムルー
クリスティーヌ・・・シエラ・ボーゲス
ラウル・シャヌイ子爵・・・ハドリー・フレイザー
カルロッタ・ジュディチェルリ・・・ウェンディー・ファーガソン
マダム・ジリー・・・リズ・ロバートソン
奴隷頭(ハンニバル)&羊飼い(イル・ムート)・・・セルゲイ・ポルーニン(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル・ダンサー)
他
本公演は、2011年10月1日と2日の2日間3公演のみ、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールにて開催されたもの。
記念公演だけあって、豪華で祝祭的な雰囲気はDVDでも十分に伝わってきて圧倒されます。実際に劇場で公演を見たら最初から最後まで感動しっぱなしの最高の観劇体験になったことと思います。
正直に告白しますと、私も以前は「ミュージカルって突然歌いだすから違和感」と言ってしまっていた一人です。その当時、見たミュージカルは数えるほどで、はっきりいって勝手な先入観、食わず嫌いだったわけです。その後、お仕事で少しずつ鑑賞するようになるにつれ、ミュージカルの魅力に気づかされるわけなのですが、このDVDは、かつての私のように「ミュージカルにはついていけない」と思ってしまっている人にぜひおすすめしたいです。
超一流の俳優たちの凄さを痛感できるこの作品、ミュージカル初心者にとって「スゴイ!」と思えるポイントの一つが「語るように歌う技術」の高さです。セリフをしゃべっていたところから突然「さあここから歌いますよ」というような、取って付けた感が全くありません。
そして、シリアスな場面とコミカルな場面の緩急の見事さ。メリハリがついていて急ぎ過ぎず、緩め過ぎず、絶妙なテンポで物語が進みます。
何と言ってもすべてがとにかく美しい。物語も、音楽も、演奏も、美術も、踊りも、演技も、芸術性に溢れ正にミュージカルの最高峰と言うべき作品です。
ファントム役のラミン・カリムルー、あまりに技術が高すぎて、歌っているのだけれど、ファントムが語っているとしか思えない表現力と歌唱力に引き込まれます。「The Music of the Night」は圧巻で、歌い終わるとしばらく拍手が鳴りやみません。クライマックスのファントムの絶望、そしてクリスティーヌへの愛。私の心に沸いていたファントムへの憎しみは、いつしかやるせない悲しみ、そして静かな感動へと変化していきました。
シエラ・ボーゲスが、可憐で純粋なクリスティーヌを、可愛らしい演技と力強い歌声で演じます。「Wishing You Were Somehow Here Again」をソロで歌い上げるシーンは、クリスティーヌの孤独、悲しみ、苦しみが伝わってくる素晴らしい歌唱です。ラウル役のハドリー・フレイザーとのデュエット「All I Ask Of You」の、クリスティーヌとラウルから溢れ出す多幸感は心温まるひとときとなり、より一層この後の展開にハラハラドキドキさせられます。
そして、セルゲイ・ポルーニンの踊りを堪能できる贅沢さ。
余談ですが、ポルーニンといえば昨年公開された、ケネス・ブラナー監督主演作「オリエント急行殺人事件」に出演していましたが、カメオ出演的な扱いになってしまっており、もっとポルーニンを見たかったな……という思っていたので、思いがけず(DVD見るまでポルーニンが出ているのを知りませんでした)美しい踊りを楽しむことが出来て得した気分です。
アンドリュー・ロイド=ウェバーの曲の凄さは、どれも美しく耳に残る旋律で、一作品の中に最低でも1つは間違いなく終演後に思わず口ずさんでしまう曲があること。「The Phantom Of The Opera」のパイプオルガンの旋律は知らない人はいない名フレーズだし、聞くと思わず高揚してしまいます。
カーテンコールも含めて見どころたっぷり。改めて、この作品が長きに渡り愛され、上演され続けている理由がよくわかる、素晴らしい舞台でした。このように映像作品として残されていて、今回見ることができたのはとても幸せなことでした。