4/4(木)、先日取材した夜桜能を鑑賞してきました。
インタビューさせていただいた隆三先生と甫先生は第一夜のご出演だったので、そちらもぜひ拝見したかったのですが、今回は第三夜のみ鑑賞させていただきました。
靖国神社の鳥居をくぐってどんどん進み、能楽堂へ。前日までの寒さが緩み、野外での夜能だけれども比較的過ごしやすかったかな、と思います。それでも約2時間20分(途中休憩25分含む)野外にずっといると体は冷えてきました。
桜はちょうど満開で、素晴らしい眺めでした。
まずは、松田弘之先生の笛の調べに乗せて、薪への火入式から始まりました。これがなかなかの迫力と趣がありよかったです。
舞囃子は「野守」、シテは角当直隆先生です。力強さと流麗さのある舞で鬼神を表現してくださいました。
狂言は「咲嘩」、野村萬先生、万蔵先生、万之丞先生と親子三代の共演で魅せてくださいました。なんといっても人間国宝・萬先生の巧みさが素晴らしすぎて、拝見できたことを心から嬉しく光栄に思います。
能は「恋重荷」、シテは梅若実先生。実先生の深く響く謡はやはり魅力的でしたし、中入前に走り去る姿、そして最後に橋掛かりを通って去っていくときに杖を投げ捨てる姿、その瞬間の緊迫感にハッとさせられました。松山隆之先生の女御、森常好先生の朝臣など、とにかくご出演されている方が皆様さすがの立ち振る舞いで、能の美しさ、その芸術性の高さを隅々まで感じることができました。演目の最後、静かに滑らかに舞台を去っていく皆様の姿にすら、感動を覚えました。
野外でのお能は、建物の中でのお能とはやはり全く違うものだと実感しました。屋内だと、やはり謡やお囃子の演奏の音がよく響いて包まれるような感覚といいますか、同じ空間にいる、という感じだと思います。しかし野外ですと、音が空気に乗って飛散することによって、能舞台が遠く感じられ、その感覚がそのまま能舞台が異世界であるというとらえ方にもつながる感じがして、より能の神聖さや世界観を際立たせる効果があるのではないかと思いました。
まだまだ能楽については勉強中で、恥ずかしながらお能の舞台を拝見したのは本当に久しぶりだったのですが、能楽をもっともっと見たい、もっともっと知りたい、と心から思いました。こんな素晴らしい芸術を堪能せずにいるなんて、もったいない。もっと多くの人に見てもらいたい。そのために自分に何ができるのか。
様々な思いを巡らすことのできた夜でした。