慢慢走 Walking Slowly

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《映画》「華氏451」

フランソワ・トリュフォー監督作品「華氏451」をDVDで鑑賞しました。


Fahrenheit 451 Trailer

レイ・ブラッドベリの名作の映画化作品です。小説は1953年、映画は1966年に作られました。

映画では、SF要素がほぼ排除されています。(それでも終盤、生身の人間が空を飛んでいるシーンが出てきて、それはちょっと笑っちゃいましたが)なので、機械犬や超小型ラジオ「巻貝」は出て来ませんし、テレビ室も大型テレビモニターが1つあるだけで、小説のようなテレビ壁に囲まれた部屋ではありません。

また、主人公であるモンターグの妻の名が、ミルドレッドからリンダに変更されており、モンターグと出会う少女、クラリスも小説では17歳の高校生ですが、映画では20歳の教師見習いです。

小説ファンとしては、様々な変更点に戸惑いつつも、それでもこの小説のエッセンスを大切にしながらトリュフォー監督自身の表現で映像化していることが伝わって来ました。そしてあらためて「華氏451度」という小説は素晴らしい作品だと認識することができました。本を読むことを禁じられた世界、余計な知識を持つこと、必要以上に考えることを排除する管理体制の世界。余計なことを考えなければ、人々は幸せに暮らせるのだから……。決してフィクションだと笑い飛ばせない恐ろしい世界。ブラッドベリが鳴らした現代社会への警鐘が心に響きます。

リンダがテレビに女優として出演するのよ!と言ってテレビに合わせてセリフをしゃべるシーンは、小説ではいまいちぴんと来なかった場面だったので、可視化されてすごく面白かったです。テレビの中の出演者2人がニコリともせずにカメラを凝視しながら声を合わせて「Linda,you are absolutely fantastic!」と言うのが不気味な滑稽さを出していて良いです。

クラリスとリンダを同じ俳優(ジュリー・クリスティ)が演じているのも面白いと思いました。ジュリー・クリスティは主演映画「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」で様々な賞に輝いていたり、ケネス・ブラナーの「ハムレット」でガートルード役で出演していたりと、様々な映画でご活躍です。

今月末、KAAT神奈川芸術劇場で「華氏451度」が舞台化されるということで、鑑賞前に映画もチェックしてみようということで今回見てみました。舞台版への期待がますます高まりました。

www.kaat.jp

↓だいぶ古いトレーラーのようで映像が劣化していますが、文中で言及した人間空中浮遊のシーンや、テレビのシーンも出て来ます。


Fahrenheit 451 1966