慢慢走 Walking Slowly

好きなことを、好きなように、ゆっくり綴る。

《舞台》阿佐ヶ谷スパイダース「悪魔の唄」

阿佐ヶ谷スパイダースPRESENTS「悪魔の唄」
作・演出:長塚圭史
出演:吉田鋼太郎、伊勢志摩、小島聖長塚圭史池田鉄洋伊達暁山内圭哉中山祐一朗 (配役順)
2005年2月17日(木)~3月2日(水) 下北沢本多劇場

 驚くほどの完成度の高さ。
これまで見た阿佐ヶ谷スパイダースとは少し異質だったし、脚本・演出ともグレードアップしたのをまざまざと見せ付けられた。

戦時中に無念の死を遂げた日本兵3人(伊達・山内・中山)と、日本兵の婚約者だった女性(小島)、女性の夫(長塚)。ゾンビなのか幽霊なのか、現代に姿を現してしまったこの5人。
夫の浮気を知って狂気に陥った女性(伊勢)、妻をなんとか正気に戻そうとする夫(吉田)、夫と別れさせようとしている女性の弟(池田)。現代を生きる3人が、先述の5人と出会ってしまい・・・。

誰かが誰かを思う気持ち。純粋だったり、歪んでいたり。
それでもやっぱり、誰かを思う気持ちは美しくて、
それがいびつであればあるほど、悲しくなる。
ただ好きなだけなのに、ただ愛しているだけなのに、その方向が狂うだけで、その思いは悲劇を生む。
その思いを裏切ったり、その思いを拒絶したりするだけで、人は人を壊すことができてしまう。

ただただ美しく、ただただ悲しく、ただただ恐ろしいお話。
それぞれのキャストの心の動きが、心に迫る。
役者も適材適所。全員の思いが伝わってくる、素晴らしい舞台だった。

ラストシーンでは、ゾクッとした。
鳥肌が立ち、涙がこぼれた。
阿佐スパで泣くなんて。

この作品のことは、きっとずっと忘れられないと思う。
見ることができて、本当によかった。