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様々な角度からじっくり見比べたい演劇3選/ホーム・シアトリカル・ホーム~自宅カンゲキ1-2-3 [vol.34] <演劇編>

エンタメ特化型情報メディアSPICE(スパイス)のサイトにて、執筆記事が公開されました。

 

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SPICE特集企画“ホーム・シアトリカル・ホーム”に寄稿しました。

この企画への寄稿のお話しをいただいたとき、何を選び何を書くか、私はいまいちピンと来ませんでした。

記事の冒頭にも少し書きましたが、舞台映像を見れば見るほど生の舞台が見られない痛みに襲われるし、やはり日常空間である家で、テレビ画面やPC画面で舞台作品を集中して見るのは非常に困難で、これは生の舞台とは全く別物だな、という思いを強くするばかりでした。

でも何か書かなければ、と思いながら最初に私が選んだ3作品は、実は舞台作品の映像ではありませんでした。舞台映像を選ぶことができないくらい、私の心は後ろ向きでした。舞台から逃げることで心の安定を図ろうとしていたのかな、と今は思います。

しかしそこで、編集部からダメ出し、というと言葉が強いですが、要は非常に的確なアドバイスが入りました。私のことをよくわかってくださった上でのご指摘に、目が覚めるような思いでした。

そこから舞台作品ともう一度向き合い、選んだテーマは「同じ作品の別バージョンや、その作品から派生したものを見比べる」、そして選んだ3作品が『カリギュラ』『グッドバイ』『ゴドーを待ちながら』でした。

特に『ゴドー』については、紹介したいが『ゴドー』自体の映像作品は世に出回っていないようだ、という相談を編集部にしたところ、非常に貴重な映像がYouTubeに上がっていることを教えていただけました。この映像は『ゴドー』の理解を深める上で非常に重要な資料となりました。また、堀真理子さんの著書『改訂を重ねる『ゴドーを待ちながら』――演出家としてのベケット』が素晴らしく面白い本で、こうした資料を参考にしながら、まるで課題レポートを書く学生のような心持ちでこの原稿を執筆しました。非常に楽しく、自分にとって非常に意義深い時間を過ごすことができました。このような機会を与えてくださったSPICE編集部には、毎度のことながら感謝しきりです。

『ゴドー』は、昨年KAATで見た多田淳之介演出版にも非常に大きな影響を受けました。あの舞台を見ていなかったらこの原稿は書けなかったと思います。そして、第三舞台レジェンド・大高洋夫さんがこの『ゴドー』に出演していたからこそ『朝日のような夕日をつれて』についても言及することができました。

カリギュラ』については、菅田将暉さん主演の栗山民也さん演出版はとても面白かったですし、菅田さんも素晴らしかったです。蜷川幸雄さん演出版は、当時マネージャーとして関わっていました。千秋楽が大阪だったので打ち上げ参加のために大阪出張して、鶴橋で美味しすぎる焼肉を食べまくったことが忘れられません(そこか)

『グッドバイ』は生瀬勝久さん演出版に際して生瀬さんと藤木直人さんに取材しました。

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映画版の監督、成島出監督にも取材しました。

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そしてコラムも書かせていただきました。

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こうやって深く掘り下げていくことが自分は大好きなんだなぁ、ということを再認識することができました。

本当に楽しく幸せな時間でした。すべての作品に、心から感謝します。

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 8/2追記:『朝日のような夕日をつれて』は現在下記のページにて87年版と91年版がレンタル配信されています。出演者はご存じ大高洋夫&小須田康人に加えて87年は筧利夫勝村政信、伊藤正宏、91年版は筧、勝村、京晋佑です。京さん、現在は俳優を引退されてしまったけれども好きだったなぁ。

filmuy.com

8/3追記:『グッドバイ』生瀬勝久演出版ですが、DVD化が発表されました。藤木直人さんやソニンさんはじめ、出演者がみんな魅力的で素敵な舞台でしたから、これは嬉しいニュースです。副音声が藤木さんと入野さんと小松さんってそれ絶対面白いやつじゃないですか。気になる。

www.e-fanclub.com

『トムとディックとハリー』

小田島先生にインタビューした記事はこちら。

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宇宙Sixは、江田さん出演の『THE BLANK! 』

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原さん出演のKOKAMI@network vol.17『地球防衛軍 苦情処理係』

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と取材執筆しており、山本さん出演の『相対的浮世絵』、宇宙Sixメンバー全員出演の『のべつまくなし・改』を観劇しております。

宇宙Sixの皆さんの今後のますますの活躍が楽しみです。

早くみんなが安心して舞台に足を運べるようになりますように。

 

「火山灰地」のこと

10年前、当時は開館前のKAATで勤務していました。

ある日の残業後に職場の先輩方にお誘いいただき、近くのお店で遅い晩御飯をご一緒させていただいたのですが、演劇について語る先輩方のあまりの熱さに強い刺激とショックを受けたことは今でも忘れられません。

自分も何らかの形でずっと演劇に関わり続けていて、演劇に対する情熱は持っている方だと思っていたけれど、先輩方の熱量とは比べ物にならず、自分はまだまだだなぁ、と思い知らされたのでした。KAATはそういう熱い人たちの集まりで、本当に刺激的な職場でした。

そのときにぼんやり思っていたのが「10年後くらいに、私は彼らのような熱量を持って演劇について語れるだろうか。そんな自信ないな」ということでした。

あれから10年が経ち、ハッキリ言ってあの頃の先輩方のような熱い語りは、やっぱり私にはできません。でも、あの頃は呆然とその話を聞いて感心するだけだったけれど、今ならばその話に寄り添い、乗っかることができる、くらいにはなれたかなと思います。

あのときの話の中で一番ショッキングだったのは、中学生のときに久保栄の「火山灰地」を舞台で見て、よくわからなかったけど戯曲を購入して読んだらめちゃくちゃ面白くて、それから演劇にはまった、という某氏の話。

先日たまたま久しぶりに「火山灰地」というワードを聞く機会があり、そんな10年前の出来事を思い出していたのでした。

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久保栄/火山灰地

10年前に向き合わずにそのままにしてしまった「火山灰地」と、今度は向き合ってみたいと思います。 

勘九郎と七之助が初の歌舞伎生配信に向けて意気込みを語る 『中村勘九郎 中村七之助 歌舞伎生配信特別公演』

エンタメ特化型情報メディアSPICE(スパイス)のサイトにて、執筆記事が公開されました。

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7月18日(土)・19日(日)に生配信される『中村勘九郎 中村七之助 歌舞伎生配信特別公演』について、勘九郎さんと七之助さんにお話しを聞きました。

中村屋を背負って立つ若いお二人の歌舞伎俳優としての思い、その重さや覚悟がひしひしと伝わってきました。「歌舞伎役者は必要じゃない職業」というお話しは心に刺さりつつも、深く納得させられるものでした。

最後に素敵なおまけがついています。
現場でカメラマンの山本さんと「この写真、すごくいいけど使えないかな~」なんて笑っていたら、編集さんが「ダメもとで行きましょう!」と記事の最後におまけとしてねじ込んでくれて、却下されるかと思いきやOKが出て晴れて掲載となりました。
信頼する編集さんとカメラマンさんのおかげで、この記事を送り出すことができたことが嬉しいです。勘九郎さんと七之助さんの二人の性格や関係性がとてもよく出ているお写真だと思います。

生配信のときはチャット機能もあるので、そちらがどのように盛り上がるのかも気になります。リアルタイムで見られなくても、見逃し配信が当日24時までありますので(チケットは当日22時までの販売となりますのでご注意ください)そちらもぜひご利用ください。

kinshu2020.com

安田顕×白井晃インタビュー 今考える、時流と演劇~舞台『ボーイズ・イン・ザ・バンド』上演に向けて

エンタメ特化型情報メディアSPICE(スパイス)のサイトにて、執筆記事が公開されました。

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舞台『ボーイズ・イン・ザ・バンド』主演の安田顕さんと演出の白井晃さんへのインタビューです。安田さんと白井さんのコンビネーションが素晴らしくて、笑いっぱなしの楽しいインタビューとなりました。

たくさん笑わせてくださって場を和ませてくださった安田さん。しかしその端々にものすごく「気遣いの人」なんだな、ということがにじんでいました。
私の質問をしっかり聞いてくださって「人と人とのぶつかり合い、っていい言葉ですね」としきりに感心してくださったのが嬉しかったです。
しかし事実確認のために武藤敬司シャイニングウィザードについて調べまくるはめになり、私は何の原稿を書いているんだ?状態に陥りながらの執筆でした(笑)

白井さんは冷静沈着でありながら熱いハートが感じられるお話しをたくさんしてくださいました。安田さんのソロカット撮影中に白井さんと2人で話すタイミングがあったのですが、やはりどうしてもKAATの話ばかりになってしまいました。今年度は白井さんのKAAT芸術監督としてのラストイヤー。こんな状況下でのスタートになってしまったのは残念ですが、KAAT再開を心待ちにしたいと思います。

『ボーイズ・イン・ザ・バンド』は7/18に東京で開幕予定ですが、現状を鑑みて販売座席の見直しが行われるなど、様々な対策を取りながらなんとか開幕に向けて進もうと苦慮されています。
皆さんが安心して劇場に足を運べる日が一日も早く来ることを願うばかりです。