志村けんさんのこと
志村けんさんの訃報に驚き、悲しみや戸惑い、様々な感情が渦巻いています。
志村さんには、朝日新聞東京版マリオン面の編集プロダクション在籍当時、インタビューさせていただき、2003年7月、Bunkamuraシアターコクーンで上演された沢田研二さんとの共演舞台『沢田・志村の「さあ、殺せ!」』についておうかがしました。
小さい頃からテレビで見てきた、コメディアンといえばこの人というくらい大きな存在の志村さんにインタビューするのは非常に緊張しました。渋谷の小さな喫茶店でお会いした志村さんは、テレビのイメージとは全く違う、とても物静かでシャイな方でした。こちらの質問に伏し目がちのまま淡々と、しかし真面目に答えてくださったことは今でも忘れられません。コント・笑いに対する思い、舞台に対する思いをしっかりとお話しされる姿に、芸に真っ直ぐなまさに「芸人」さんなんだな、という印象を受けました。
インタビューカットは、同行してくれた上司が撮影してくれました。当時はまだフィルムカメラの時代でしたから、ほとんど真顔で受け答えされていた志村さんの一瞬の笑顔をとらえた、本当に素敵で貴重な写真だと思います。
編集者としてもライターとしてもまだまだ駆け出しだった私のインタビューに丁寧に答えてくださった志村さん、本当にありがとうございました。お会いできたのはこの1回きりでしたが、あのときのことはずっと忘れられません。
2003年のこの舞台出演がきっかけになったのか、その後2006年から「志村魂」というご自身主催・主演の舞台を毎年上演されていました。インタビュー中に「本当は年一回は舞台をやりたい」とおっしゃっていたことを実現されたのだな、と勝手に嬉しく思っていました。今年も上演予定だったのにそれが叶わなくなってしまったのは本当に悲しいです。
コロナウィルスはあっという間にたくさんの物を奪ってしまう。今はただ、一刻も早く終息することを祈り、そのために自分のできる最善を尽くし、同時に文化芸術の火を決して消さないようにも、可能な範囲で力を尽くしたいと思います。きっと、それは志村さんの願いでもあると思うから。
志村さん、またいつかお会いしたかったです。またあなたの舞台を拝見したかったです。あなたが大いに燃やしてくれた芸人魂により活気づいたエンターテイメントの世界の火を決して消さぬよう私たちは守り続けていくことを誓います。心よりご冥福をお祈りいたします。