《舞台》ナショナル・シアター・ライブ「エンジェルス・イン・アメリカ」
ナショナル・シアター・ライブ「エンジェルス・イン・アメリカ」第一部・第二部を鑑賞してきました。
エンジェルス・イン・アメリカ 第一部 至福千年紀が近づく
(原題:Angels in America Part 1 : Millennium Approaches)
エンジェルス・イン・アメリカ 第二部 ペレストロイカ
(原題:Angels in America Part 2 : Perestroika)
第一部は途中休憩15分を2回挟んで3時間58分、第二部は同じく休憩2回を挟んで4時間28分、と壮大な作品です。これまで日本でも何度も上演されてきた舞台作品ですが、なかなか鑑賞する機会がなく、今回ようやくこの名作を見ることができました。
プライアー・ウォルターを演じたアンドリュー・ガーフィールドの熱演が群を抜いて素晴らしかったです。映画「アメイジング・スパイダーマン」で主演、映画「ハクソー・リッジ」ではアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたその演技を十二分に堪能することができました。愛らしく、気高く、美しく、人間臭く、ひたむきなプライアー、素敵でした。
「エイズ」という言葉がセンセーショナルに報じられた1980年代。その内容は「同性愛者がかかる病気」という差別と偏見に満ちたものでした。
実在の人物だったロイ・コーンは、自身が同性愛者であったにも関わらずその事実を公には否定し、同性愛者を差別しており、エイズを発症しても自分は肝臓癌だと言い張っていました。マイノリティー側の人間が、同じであるはずのマイノリティーの人々を差別する。いじめの構図と同じですね。差別する側に立つことで自身が差別されることから逃げ、マジョリティー側の仲間入りをした気になれる。なんていう悲劇だろうと、絶望的な気持ちになりました。
そんなロイ・コーンを演じたネイサン・レインの迫真の演技は、見るものの心に様々な感情を湧き立てるものでした。ロイ・コーンとは真逆に、自身がゲイであることを公表しているネイサン。そんな彼だからこそ、どこまでも憎たらしく、それでもなお愛すべき部分を持つロイ・コーンという複雑な人間像を表現することができたのではないか、と思いました。
今回鑑賞できたことで、世界中で愛される名作の魅力がよくわかりました。今度、日本で舞台上演がされることがあればぜひ鑑賞したい、と思います。